大雪の中を行く行商人が運んでいるものは?「新版画」にみる大正時代の根岸の情景。
横浜美術館のコレクション(所蔵作品)の中には横浜市内18区と関連する作品があるのをご存知ですか?
横浜の風景が描かれた作品、横浜出身の作家や横浜を拠点に制作活動にはげんだ作家の作品など、数多く所蔵しています。
今回は、磯子区ゆかりの作品、チャールズ・バートレット《横浜根岸の雪》についてご紹介します。
海を臨む集落に降り積る雪の中を行く、三人の人物―。江戸後期に歌川広重が描いた有名な浮世絵《東海道五拾三次 蒲原夜之雪》にも通じる、静かな詩情に満ちています。作者は大正期に来日したイギリス人。水彩画家として活躍していたバートレットはアジアへの旅で訪れた日本で、東京の版元・渡邊庄三郎に出会い、「新版画」に取り組みました。「新版画」とは、江戸の浮世絵の伝統を新しい時代に受け継ぐことを目指し、渡邊が提唱した木版画のことです。
この版画が作られた当時、根岸や磯子には遠浅の豊かな海が広がり、沿岸には漁師の家々が並んでいました。手前の 棒手振 り(行商人)が天秤棒にぶら下げた 盥 には、根岸湾の冬の恵みが入っていたことでしょう。丘の上に商いに出かけた帰りなのか、横浜では当時も珍しかったはずの大雪に足が埋まり、バランスを取りながら歩くのが大変そうです。異国への旅を愛したバートレットが、浮世絵の典型的な構図や色彩に関心を寄せるに留まらず、訪ねた地の人々の暮らしにも細やかな眼差しを注いでいたことがわかります。
横浜美術館では本作のほかにもさまざまな作品を所蔵しています。
ほかの作品について知りたいと思ったかたは「コレクション検索」をチェックしてみてくださいね。
横浜美術館スタッフが18区津々浦々にアートをお届け!「横浜[出前]美術館」
現在、大規模改修工事のため、長期休館中の横浜美術館。
お休みのあいだ、学芸員やエデュケーター(教育普及担当)が美術館をとびだして、レクチャーや創作体験などを市内各地におとどけする「横浜[出前]美術館」!その様子をレポートします。
第4弾は、磯子区の横浜市磯子区民文化センター杉田劇場にうかがい、講座「オリジナルのエコバッグをつくろう」を開催しました。
あわせて、18区の魅力を発見する、講座参加者の皆さんにきいた「みんなに伝えたい!わたしの街のいいところ」もぜひご覧ください。
▶「アートでめぐる横浜18区」磯子区編
消しゴムスタンプで「オリジナルのエコバッグをつくろう。」