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荒井寛方《どんど焼》

14,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。

荒井寛方《どんど焼》1929年(昭和4年)
紙本着色、軸装(一幅)/262.3 x 149.6 cm
横浜美術館蔵

どんど焼きは、小正月(1月15日前後の頃)に行われる火祭り。新たな年が病気や怪我なく過ごせるように、正月飾りなどを焼いてお祈りした身近な行事でした。火がけがれを清め、魔をはらう意味とした平安時代の宮中きゅうちゅうの行事から一般に広まったとも言われます。地方によって違う呼び名があります。画面の中央の朱色しゅいろの炎は、装飾的な形をつなげていくように描かれて、堂々と燃え盛る様子が大きく表されています。その脇で炎を見上げる子どもたちの手は、仏教でいういんを結ぶような丸い指の形や、数珠じゅずを持つような形に描かれています。それは、まるで大きな炎を本尊ほんぞんとした脇侍わきじの仏像のようです。この画家は仏画ぶつがに優れた作品を残したことで知られています。

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