作者も作品名も制作年もわからない!?謎多き《外国人男性和装像(仮題)》。
「横浜[出前]美術館」–栄区編–
現在、大規模改修工事のため長期休館中の横浜美術館。
お休みのあいだ、横浜美術館の学芸員やエデュケーター(教育普及担当)が美術館をとびだして、レクチャーや創作体験などを市内各地におとどけする「横浜[出前]美術館」!
第2弾は、栄区の横浜市栄区民文化センターリリスに、学芸員によるレクチャー「青い目のサムライ登場!~幕末の横浜で出会う和洋折衷オモシロ絵画『横浜絵』~」をお届け!その様子をレポートします。
そのほか、18区の魅力を発見する「みんなに伝えたい!わたしの街のいいところ」、18区ゆかりの所蔵作品や作家をご紹介する「横浜美術館コレクション×18区」の特集もお楽しみください。
キャプションから読み解く《外国人男性和装像(仮題)》
今回、会場となったのは栄区にある横浜市栄区民文化センターリリス。
複合施設「地球市民かながわプラザ」内にあり、ホール、ギャラリー、音楽ルーム、練習ルームがあります。JR本郷台駅から徒歩3分とアクセスも良く、コンサートなどを主催しているほか、貸出施設としても多くの市民の方に親しまれています。そして何と言っても建物が魅力的!球体や建物から伸びるアーチ、天井のステンドグラスなど素敵な意匠が至る所にあり、凄くワクワクします。
講座では、当館のコレクション作品、伝・五姓田芳柳《外国人男性和装像(仮題)》についてお話ししました。
まずは、普段何気なく見ている、キャプションに注目し、そこから読み取れる情報をもとに、作品をひも解きました。
実はこの作品には、まだわからないことが多くあります。
何がわからないかというと、作者も作品名も制作年もわかっていないのです。
● [作者]伝・五姓田芳柳。“伝”ということは明確にはなっていないということ。
● [作品名]作品には奥書や添え状など作品名がわかるものがなく、《外国人男性和装像(仮題)》は購入当時、横浜美術館の学芸員がつけたもので、作者がつけたオリジナルの作品名はわかっていません。
● [制作年]不詳です。
分かっているのは、絹に絵具で色をつけて描かれていること、掛け軸であること、絵のサイズが 119.4×51.1cmということ。
ちなみに、作品番号(95-JP-00C)は、横浜美術館オリジナルの作品番号で、現在は全国統一の規格はありません。
95は1995年に購入、JPはJapanese-style Paintingの略、00Cは、制作年不詳の作品につけている番号です。
講座の後半では、同じ「伝・五姓田芳柳」の外国人和装図との比較など、作者や本作についての八柳主任学芸員の研究成果をお話ししました。
今はまだ研究中とのことですが、「わからないことがあるという事は、まだまだ研究の余地があるということ」と意気込む八柳主任学芸員!研究成果がまとめられ発表されるのが待ち遠しいですね。
新たな事実が判明すると、キャプションの記載内容もかわるそうなので、伝・五姓田芳柳《外国人男性和装像(仮題)》もいつかキャプションが変わる日がくるかもしれません。
*新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、ガイドラインを遵守した対策を講じた上で実施しています。
18区の魅力発見! 講座参加者の皆さんにきいた「みんなに伝えたい!わたしの街のいいところ」
横浜のことを知っているのは、よく訪れたり、住んでいる方々!
講座参加者の皆さんの声から栄区の魅力をご紹介します。
自然が魅力、散策にもピッタリ! 栄区のおすすめスポット
●安心で落ち着いて暮らせるところ。鎌倉の海や歴史、金沢八景方面など、あちこち近くて楽しめます。田谷の洞窟も魅力ですよ!(栄区在住、80代以上)
●区のホールがオシャレ(保土ケ谷区在住、20代)
●鎌倉アカデミアのしゅうえんのちであるということか(栄区在住、60代)
●イタチ川沿いの遊歩道は四季折々に楽しめます。時折カワセミを見ます(港南区在住、70代)
●子供が室内で知的に遊べる空間がある(横浜市外在住、40代)
●自然が多いこと(港南区在住、50代)
●自然と街の一体感(港南区在住、60代)
●駅前が心地よい印象で、市民ホールがランドマーク的で区民に愛されている感じがする(青葉区在住、50代)
●長沼町にある親鸞聖人由来の長沼山正安寺(栄区在住、70代)
●源頼朝が建立したと伝わる証菩提寺や昔の刀鍛冶関連の逸話が伝わる歴史のある町(港南区在住、60代)
「横浜美術館コレクション×18区」
当館のコレクション(所蔵作品)の中から、横浜市内18区ゆかりの作品や作家をご紹介します。
ステンレスと漆の融合。
新たな漆芸の可能性を追求する作家・赤堀郁彦
赤堀郁彦(1936生)は、栄区を拠点に、漆芸における新しい表現の可能性を追求してきた作家です。漆地に象牙や貝類をはめこむ横浜の地場産業、芝山細工の技術保存にたずさわる一方で、ステンレスやチタンなどの工業素材を漆にとりいれた、斬新な作品を発表してきました。真っ暗な空間に光る幾何学的な物体が浮かぶこの作品には、雄大な宇宙と、エネルギッシュな人々の営みが共生する、「未来への夢」がこめられています。漆地に金属の薄い板をはめこむ漆芸の伝統的な装飾技法を用いながら、磨き分けや着色により加工されたステンレスが巧みに活かされ、現代の建築空間との調和をめざした作家の意図がみてとれます。
――みなさんもぜひ栄区を訪れてみてくださいね――
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