イサム・ノグチと神奈川の関係は? その足跡をたどる。
「横浜[出前]美術館」–青葉区編–
現在、大規模改修工事のため長期休館中の横浜美術館。
お休みのあいだ、横浜美術館の学芸員やエデュケーター(教育普及担当)が美術館をとびだして、レクチャーや創作体験などを市内各地におとどけする「横浜[出前]美術館」!
第1弾では、青葉区の横浜市民ギャラリーあざみ野「あざみ野カレッジ」に、学芸員によるレクチャー「イサム・ノグチと神奈川」をお届け!その様子をレポートします。
そのほか、18区の魅力を発見する「みんなに伝えたい!わたしの街のいいところ」、18区ゆかりの所蔵作品や作家をご紹介する「横浜美術館コレクション×18区」の特集もお楽しみください。
世界のイサム・ノグチと神奈川の深い縁
今回、会場となったのは青葉区にある横浜市民ギャラリーあざみ野。
展示室やアトリエを市民利用の場として提供するほか、年に3回の企画展や、多彩なアトリエ講座、コンサートなどを企画実施している施設です。
私たちが訪れた日はお天気もよくエントランスホールにはいってくるお日様がすごく気持ちよかったです。
ちょうど貸出している展示室で展覧会が開催されていて、市民の方がたくさんいらっしゃり活気に溢れていました。横浜市民ギャラリーあざみ野が青葉区の文化芸術の拠点として親しまれているのを感じました。
講座では、神奈川がイサム・ノグチと縁深い土地であることからノグチの足跡をたどりました。
幼少期を過ごした茅ヶ崎や山手のインターナショナルスクール時代、アメリカの学校に通うため横浜港から渡米したエピソードをはじめ、戦後の1950年に再来日を果たしたノグチの川崎津田山の国立工芸指導所での作品制作、画家・猪熊弦一郎や建築家・谷口吉郎との交遊、藤沢(辻堂)での美術家・長谷川三郎との交流、鎌倉の北大路魯山人の星岡窯(せいこうよう)での作品制作と離れ家の住居兼アトリエで、歌手で女優の山口叔子と結婚生活を送ったエピソード、鎌倉近代美術館(現神奈川県立近代美術館)での個展などについてご紹介しました。
ノグチが手掛けた「こどもの国」児童遊園 設計当初の構想とは
次にノグチが設計を手掛けた、青葉区奈良町にある「こどもの国」の児童遊園エリアについてお話しました。
当初は、児童館、すべり台、二つのジャングルジム、原子部落やピラミッド、池、スケートリンク(夏は水遊び場)、花形砂場など計画されましたが、その一部が施工されるにとどまりました。
今日残されているのは残念ながらその一部に過ぎません。マンジュウ山(現まるやま)、門と通路(現エントランス通路)、後年ノグチが寄贈したオクテトラはみることができますので、「こどもの国」を訪れた際には探してみてはいかがでしょうか。
ノグチの構想が全て実現された児童遊園はどんなに凄かったことでしょう。想像しただけでも楽しい気持ちになります。
横浜美術館では、《真夜中の太陽》や《三位一体》などイサム・ノグチの作品を6点所蔵しています。
また2019年には「イサム・ノグチと長谷川三郎―変わるものと変わらざるもの」を、2006年には「イサム・ノグチ 世界とつながる彫刻」展を開催しました。
▶所蔵作品検索はこちら
▶企画展「イサム・ノグチと長谷川三郎―変わるものと変わらざるもの」はこちら
▶企画展「イサム・ノグチ 世界とつながる彫刻」はこちら
*新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、ガイドラインを遵守した対策を講じた上で実施しています。
18区の魅力発見! 講座参加者の皆さんにきいた「みんなに伝えたい!わたしの街のいいところ」
横浜のことを知っているのは、よく訪れたり、住んでいる方々!
講座参加者の皆さんの声から青葉区の魅力をご紹介します。
グルメも、自然も、歴史も、文化施設も。青葉区のおすすめスポット
●スイーツ・パンの激戦区。クノップウのかき氷、バボン、ベルグの4月、前田パンetc.幸せな気持ちになれる(青葉区在住、50代)
●青葉台に住んだことがありいい環境だった(北部4区外横浜市在住、70代)
●自然が多く住み易い街(青葉区在住、50代)
●國學院大學の遊歩道の先、元小野屋食堂の女店主の週3回営業中の「からあげ」屋。新石川/「ツインピークス」のアメリカンチェリーパイがたべられる「トルバドール」新石川(青葉区在住、50代)
●寺家ふるさと村秋に開催される寺家回廊はこのエリアに住むアーティストの作品が紹介されたり交流できるイベント。田んぼアートもおもしろい。地元のアートイベントとして楽しみにしています(青葉区在住、50代)
●首都圏へのアクセスが良く、生活圏として利便性に秀れている。にもかかわらず、自然が豊かで文化施設が多い(青葉区在住、50代)
●ふる里村(寺家町)(青葉区在住、70代)
●おいしい食べ物屋さんがいろいろ多数ある。坂が多く、自然と人工がうまく混在している。公共施設やスポーツ施設が充実している(青葉区在住、70代)
●自然(ex寺家ふるさと村)と市民生活(exたまぷらーざ)が共存する点(都筑区在住、50代)
●大山街道が通っている→江戸文化が!!(青葉区在住、70代)
●あちこちに手頃な公園があり、どこからも空を大きく仰ぐことができる開放感。時の流れをゆっくり感じられる自然の豊かさ(青葉区在住、70代)
●東京に出やすい。坂が多い(青葉区在住、50代)
●まだ自然が多い。ゆったりしている。図書館、地区センター、アートフォーラムあざみ野がある(青葉区在住、70代)
●思いがけない自然がたくさんある(これ以上減らないといいです)(青葉区在住、50代)
「横浜美術館コレクション×18区」
当館のコレクション(所蔵作品)の中から、横浜市内18区ゆかりの作品や作家をご紹介します。
中島清之が愛した青葉区恩田町
中島清之(1899-1989)は京都に生まれ、16歳で横浜に移り住んだ画家です。
1970年、長く家族と暮らした南区大岡を離れ、青葉区恩田町に転居し、最晩年まで同地で制作に打ち込みました。清之は豊かな竹林のある恩田の風景を愛し、毎日スケッチブックを抱えての散歩を欠かしませんでした。
この絵のモデルは、清之が町内で親しく交流した鈴木憲一・小江夫妻。夫妻は芸術に造詣が深く、また世界中に新種を探しに行くほどの椿の愛好家で、自邸を「椿笑園(ちんしょうえん)」と呼んだそうです。この絵は、夫妻の夏の午後ののどかな時間を、手前の縁側にいる訪問者の視点でとらえています。部屋に差す光のまばゆさを強調するかのように、人物の輪郭には鮮やかなオレンジ色の絵具が効果的に使われています。
――みなさんもぜひ青葉区を訪れてみてくださいね――