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埋め立てが進む前の生麦の姿を捉えた、石渡江逸《生麦の夕》。黄昏時の下町風景にみる人々の暮らし。

横浜美術館のコレクション(所蔵作品)の中には横浜市内18区と関連する作品があるのをご存知ですか?

横浜の風景が描かれた作品、横浜出身の作家や横浜を拠点に制作活動にはげんだ作家の作品など、数多く所蔵しています。

今回は、鶴見区ゆかりの作品、石渡江逸いしわたこういつ《生麦の夕》についてご紹介します。

石渡江逸《生麦の夕》
1931年
多色木版 h. 36.3 × w. 24.0cm
横浜美術館蔵

うっすらと夕日が残る昼と夜の境目。空の上からは青みを帯びた闇が迫り、くっきりと輪郭を現し始めた月が、夜の訪れを告げます。小舟は行儀よく水辺に並び、人々はすでに帰路についたのか、人影のない静かな風景です。埋め立てが進む前、生麦周辺には、佃煮になる貝をむき身にして生計を立てる家が多くありました。地面に山積みになった貝殻から、この煙突のある建物も、むき身工場であることがわかります。空や水の鮮やかな藍色や、近景を大きく捉えて遠景と対比する構図は、江戸の浮世絵の伝統を引き継いだものです。しかし、いわゆる「名所」を描かず、身近な下町の何気ない風景に向けた視線に、作者の独自性を見て取ることができます。

横浜美術館では本作のほかにも石渡江逸の作品を所蔵しています。
ほかの作品について知りたいと思ったかたは「コレクション検索」をチェックしてみてくださいね。

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横浜美術館スタッフが18区津々浦々にアートをお届け!「横浜[出前]美術館」

現在、大規模改修工事のため、長期休館中の横浜美術館。
お休みのあいだ、学芸員やエデュケーター(教育普及担当)が美術館をとびだして、レクチャーや創作体験などを市内各地におとどけする「横浜[出前]美術館」!その様子をレポートします。

第5弾は、鶴見区の横浜市鶴見区民文化センター サルビアホールにうかがい、学芸員によるレクチャー「『穴』からのぞくシュルレアリスム ~世界をワクワク見なおす方法~」を開催しました。

あわせて、18区の魅力を発見する、講座参加者の皆さんにきいた「みんなに伝えたい!わたしの街のいいところ」もぜひご覧ください。

「アートでめぐる横浜18区」鶴見区編
「『穴』からのぞくシュルレアリスム ~世界をワクワク見なおす方法~」