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謎めいたタイトルに込められた複雑な気持ち―瑛九《「眠りの理由」より》

13,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。


瑛九《「眠りの理由」より》1936年(昭和11年)
ゼラチン・シルバー・プリント/h26.7 x w21.7 cm
横浜美術館蔵

写真の印画紙の上に直接ものを置き、感光させる、「フォトグラム」という技法で作られた作品です。表紙にはフランス語で「Raison du sommeil(眠りの理由)」。謎めいたタイトルは、おそらくスペインの画家、フランシスコ・デ・ゴヤの有名な版画《理性の眠りは怪物を生む》(1799年)にヒントを得ています。フランス語で「理性」と「理由」は同じ「レゾン(raison)」という単語。つまり、ゴヤの「理性レゾンの眠り」をひっくり返すと「眠りの理由レゾン」になるのです。「眠りの理由」が制作されたのは、日中戦争(1937年)から第二次世界大戦へと向かう時代です。瑛九は、息苦しい時代には眠りの世界に潜り込み、そこで想像の翼を広げよう、と呼びかけているのかもしれません。

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