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150年後、彼らが指さすものとは?

毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。今月は、2022年11月14日(月)より始まった、工事中の横浜美術館の仮囲いを使ったプロジェクト「New Artist Picks: Wall Project 浦川大志うらかわたいし|掲示:智能手机ヨリ横浜仮囲之図」出品作品よりお届けします。


浦川大志《仮囲い》(部分)2022(令和4)年
パネルに綿布、ジェッソ、アクリル/h. 75 × w.322 cm

ふたりの人物が何かを指さしながら、言葉を交わしています。これはWall Projectで仮囲いに掲示される、大きな作品の一部です。さて、指さす先には何が描かれているのでしょうか。

時を150年ほど遡ることにしましょう。なぜなら、このふたり、もともとは江戸から明治時代にかけて、文明開化の時期に活躍した浮世絵師、歌川広重(三代)の《横浜波止場より海岸通異人館之真図》(1870年代)に登場しているからです。

歌川広重(三代)《横浜波止場より海岸通異人館之真図》1870年代(明治初期)
多色木版、三枚続/h. 35.8 × w. 72.5 cm(3枚貼合せ)/横浜美術館蔵(齋藤龍氏寄贈)


浦川は今回の作品制作のために横浜に関する作品や写真などの大量の画像をインターネット上で探索しました。そのすえにたどり着いたのが、広重(三代)の作品であり、そのなかの彼らなのでした。場所は当時、外国人居留地となっていた海岸通りで、いまの山下公園のあたり。交易品を積み終わり、出帆したばかりの米国船とそれを眺める人物を描いた作品です。画面の一番左手に立ち、おそらく海の向こうの米国船を指さしているのが、そのふたりになります。

開国以来、横浜は東西交流の場として、さまざまな文化、文物の交流地となってきました。広重(三代)が描いているのは、まさにその一場面であると言っていいでしょう。それから150年ほどの時を経て、この横浜をテーマとした作品で浦川は、2022年に彼らに何を指ささせたのでしょうか。

たとえば、それが彼らの描かれた仮囲い自体だったとしたら?彼らは、仮囲いを眺める私たち自身の姿に見えてくるかもしれません。

そのほかにもいくつかの仕掛けがこの作品には隠されています。ぜひ美術館の正面仮囲いの前で、読み解いてみてください。その際にはスマートフォンもお忘れなく。

[New Artist Picks: Wall Project]第2弾 浦川大志|掲示:智能手机ヨリ横浜仮囲之図」はこちら


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