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二度と見られない光景―福山秀治《ミルク瓶のふた》

13,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。


福山秀治《ミルク瓶のふた》1930-35年頃(昭和5-10年頃)
ゼラチン・シルバー・プリント/h 26.7 x w 34.2 cm
横浜美術館蔵(荒木田愛彦氏寄贈)

ふたりの少年が建物の前でゲームに興じています。作品からは、勝負に熱中するふたりの緊張感が伝わってきます。この写真でとくに目を引くのは、地面や建物に落ちる光の表現ではないでしょうか。地面に落ちる光は、少年たちを照らすスポットライトであり、彼らの真剣勝負の舞台をも形づくっています。また、体をかがめる少年の後ろの建物に落ちる光にも注目してください。この光はまるで、少年の背中に天使の羽が生えているような錯覚を引き起こします。この写真を撮った福山秀治は、第二次世界大戦前にアメリカに渡ったアマチュア写真家です。彼はロサンゼルスに暮らす友人たちと、写真の芸術性を高めようとする運動に携わりました。

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