小野寺玄《炭化象嵌花生 銘「花火」》
14,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。
黒い艶と固い肌合いをもつ能登半島珠洲の土との出会いから、黒の発色にこだわり続けてきた小野寺玄。1980年代になるとその作陶にも、新しい変化がみられるようになりました。白と黒の粘土を調合し、組み合わせ、連山や海峡を思わせる景色をうみだす練上げの技法。表面を削りとり、線文をほどこす掻き落としの技法。掻き落としの後に異なる色の土を埋め込む象嵌の技法。黒を基調としながらも、これらの技法を巧みに用いることで、多彩な作品がうみだされました。「花火」と題されたこの作品も、明暗のある黒地に白土の掻き落とし象嵌をほどこすことで、夜空を彩る花火が、華やかに表現されています。
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