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長谷川潔《奇術》

14,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。


長谷川潔《奇術》1925年(大正14年)
ドライポイント、手彩色 /12.5 x 8.3 cm
横浜美術館蔵


細やかな線からなるドライポイント(金属板に直に線や形を彫る技法)の上に作家本人による手彩色が加えられ、画面全体は軽やかな空気に包まれています。タイトルの通り、「奇術」によって鳥や魚、蝶、理性の象徴である幾何学立体のキューブが姿を現しています。その奇術の使い手は中央にいる女性に違いないでしょう。長谷川は1920–30年代にミューズ(女神)や裸婦を繰り返し描きましたが、この作品の女性像もそのひとつと言えます。またそれ以前より、長谷川は目に見えない内面や観念を表現する画家エドヴァルド・ムンクやオディロン・ルドンに魅かれていました。彼らの作風のもつ暗示性や神秘性が、この作品では奇術という形で表現されているのです。

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