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暮らしに溶け込む季節感−山を描かず山開き示す美人画―尾形月耕《山開き》

13,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。


尾形月耕《山開き》『文芸倶楽部』第16巻第8号 口絵、1910(明治43)年
木版/h31.7 x w22.3 cm
横浜美術館蔵

明治期、小説の単行本で読者を引き付けた木版の口絵は、文芸雑誌にも付けられるようになります。出版社の博文館はくぶんかんは『文芸倶楽部』に、手間をかけた多色 たしょく木版もくはん口絵くちえを付けました。初め、掲載された小説の登場人物を紹介しましたが、小説が仕上がってから読み込んで絵を描くのは、工程の上で負担でした。そこで、掲載内容とは別に、季節感のある美人画の口絵くちえを登場させました。これはその一枚。作者は、口絵くちえ挿絵さしえをよく描いた画家の一人です。山開きは、夏山シーズン初め、登山の安全を祈願した節目。また、婦人が手にする麦藁むぎわらへびは、江戸時代中期以降、富士山の信仰に結び付いた厄除やくよけの土産物として、定着していました。

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