維新の光―小林清親《東京新大橋雨中図》
13,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。
きものの裾をからげて歩く、後ろ姿の女性。橋を行く人もみな傘をさしていますが、彼女の足もとの水たまりはしぶきを上げておらず、雨は小降りになってきたようです。水平線から立ちのぼる陽光に空の色はうつろい、川の面もシマシマにきらめいています。
幕末に武士の子として生まれた小林清親は、新しい明治の社会で浮世絵師になりました。大きな政変によって支配層が入れかわり、異国の文物が次つぎ流入してきても、日々のくらしは緩やかにしか変わり得ないもの。江戸から東京に名を転じた町を変わらず流れる隅田川と、その上に少しずつ広がっていく雨後の光に、清親は、維新の世情をかさねて見たのかもしれません。
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