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松林桂月《葡萄図》

14,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。

松林桂月《葡萄図》1936年頃(昭和11頃)
絹本墨画、二曲屏風一双 /各 174.0 x 171.0 cm
横浜美術館蔵(筒井佐太郎氏寄贈)

粒を多く実らせるブドウは、子が増えて繁栄はんえいを連想させるおめでたいもの。ここに見られるツルを伸ばそうとする姿も、繁栄はんえいの意味を強めるかのようです。作者は、ブドウの葉の筋を明確な線で描いていますが、葉や実の形を線で縁取っていません。例えば右隻は、線を無くす描き方と墨の濃い薄いで、ブドウを夜の気配に溶け込ませています。それは、月明かりに包み込まれるような効果を生んでいることがわかるでしょう。また、江戸時代以前は漢詩が絵の中によく書かれました。作者は明治から昭和に生きた画家ですが、ブドウの豊かな実りと響き合う月光の美しさを詩でもたたえています。

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