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【第1回】「いま、ここで生きてる」ってなんだ?!

横浜美術館では、現代アートの国際展「第8回横浜トリエンナーレ」を舞台に、10代を対象とする全6回のプログラムを開催しました。今回は「横浜トリエンナーレを体験しよう!伝えよう!」と題した、ユースプログラム第1回目の様子をレポートします。
 
初日は、横浜美術館の「市民のアトリエ」に集合し、参加するみなさんの顔合わせからスタートしました。はじめて来る場所やはじめて会う人に、みなさん少し緊張気味だったでしょうか?


まずは、心と体をほぐすために○×ゲームをおこないました。「今日、朝ごはんを食べた?」「絵や作品を見るのが好き?」「好きなことや特技がある?」などの問いをきっかけに少しずつお互いについて知っていきました。
自己紹介では、名前や学年に加え、横浜トリエンナーレのテーマにちなんで「いま、ここで生きてる」と感じる瞬間についても話してもらいました。

プログラムやメンバーの様子を知れたところで、早速、「第8回横浜トリエンナーレ」が開催されている展示室へ。まずは会場の全体像を把握するため、3グループに分かれて1時間の鑑賞をおこないました。展示室には、絵画や彫刻、映像作品、これは作品なのかな?と思うようなものまで、さまざまな作品が展示されています。




1時間では細かなところまでは見られませんでしたが、まずは全体像を把握してテーマをつかむことを大切にしました。
また、この後お話を聞く本展参加アーティストである志賀理江子さんの作品をじっくり鑑賞しました。展示フロアの回廊にある、大きな赤い写真や細かく書かれた文章はいったいどんなことを伝えているのでしょうか?

午後は「第8回横浜トリエンナーレ」参加アーティストであり、写真家の志賀理江子さんにお話をお伺いしました。志賀さんは2008年から宮城県を拠点に活動され、東日本大震災での経験はご自身のあらゆる物事の考え方を一変させてしまったと言います。

蛇口からきれいな水が出ること、夜が街灯で明るいこと…この当たり前にあるものの裏には何があるのか? 避難所で他者と生活し共同して何かを進めていくこととは? 今も生存の確認されていない人はどこへ行ってしまったのか? 震災後に建てられた大きな堤防は本当に必要か? 現在も持ち続けている志賀さんの疑問を私たちに共有してくださいました。また、これらの疑問について志賀さんご自身も、自分なりの考えが持てるようになるには、たくさんの時間を要したと語られていました。

そして、出展作品である《霧の中の対話:火 ー宮城県牝鹿半島山中にて、食猟師の小野寺望さんが話したこと》(2023-24年)の取材で得た体験についてお話しいただきました。小野寺さんは常に動物の視点で山を歩いているため、小野寺さんに見えて、志賀さんには見えないものがたくさんあったといいます。「野生動物は死ぬ瞬間まで生きることしか考えていない」という小野寺さんの言葉は、私たちに生命について考えるきっかけを与えてくれます。
 
また、小野寺さんと共に志賀さんが体験した、鶏を絞めてさばき、食べるまでのワークショップの様子が写真・ビデオで紹介されました。自らの手で動物の命をいただく体験は、自然が与えてくれるものがいかに多いかを学ぶ手がかりとなると言います。
 
志賀さんたちは、はじめは動物を殺してしまうことへの罪悪感が強かったものの、食べるまでの準備をしていくうちにお腹が空いてしまっていたとのこと。ご自身の経験に基づく、生命のエネルギーの循環のお話に、10代の参加者は真剣に耳を傾けていました。

最後には、志賀さんにお持ちいただいた鹿の骨を観察しました。実際に骨を持ってみると、なんだか流木のようにも見えるとの声もありました。「土は生き物の死骸で作られている」と志賀さんが語るように、木も動物もひとつづきの生命と感じられるような体験でした。


参加者の感想の一部を紹介します。

・20名の人たちが同じ場所に集まって色々なことを体験するのを楽しみにしていました。最初は緊張しましたが、コミュニケーションを通じて仲良くなれた子もいたので次の回も楽しみです。
・初めて美術館に入った時、怖かった。知らない国の森に迷いこんだみたいだった。
・何かについてよく考える、という場面も減っているため、日常の中で何かを考えるという機会を自分自身で作っていきたいと思った。
・(志賀さんの作品について)写真と言葉で見ることによって自分事化が出来た様な気がした。
・骨も木もさわってみるとあまり変わらない。
・鹿の骨は金魚の餌の臭い。
・エネルギーは地球にも1つ1つの植物や生物にもあるものなのに、人間がこわしたりバランスをくずしてしまって命をうばってしまっていて本当に今の状態は良いものなのか疑問に思いました。
・もし自分の死体が微生物たちに食いちらかされても、何かしらの命をつなぐ養分になるんだと思うと、不思議とゾッとしない。だから人々は宗教を信じ、自分の埋そう方法にこだわってきたのかなー。
 
次回は参加アーティストのSIDE COREとの活動を中心に、第2回のレポートをお送りします。 

【撮影:加藤甫】

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