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小野寺玄《炭化象嵌花生 銘「花火」》

14,000点をこえる横浜美術館のコレクション作品から、毎月選りすぐりの1点をご紹介するシリーズ。学芸員がコンパクトに解説します。おなじみの作品も、はじめましての作品も、どうぞご堪能ください。

小野寺玄《炭化象嵌花生 銘「花火」》2000年(平成12年)
象嵌、陶器/高さ 41.0 cm、胴径 34.0 cm
横浜美術館蔵(小野寺淳子氏寄贈)
 Photo by Masuo Mineaki

黒いつやと固い肌合いをもつ能登半島珠洲すずの土との出会いから、黒の発色にこだわり続けてきた小野寺玄。1980年代になるとその作陶にも、新しい変化がみられるようになりました。白と黒の粘土を調合し、組み合わせ、連山や海峡を思わせる景色をうみだす練上ねりあげの技法。表面を削りとり、線文せんもんをほどこすき落としの技法。掻き落としの後に異なる色の土を埋め込む象嵌ぞうがんの技法。黒を基調としながらも、これらの技法を巧みに用いることで、多彩な作品がうみだされました。「花火」と題されたこの作品も、明暗のある黒地に白土の掻き落とし象嵌をほどこすことで、夜空を彩る花火が、華やかに表現されています。

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